日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

『修羅』終演

・いわゆるショーケース的イベントに参加するのは『視点vol.1』「ファイトアローン」につづいて三回目である。これらの経験から学んだのは、乗せる作品は「直球」にすべきということで、初めて観る方が「へえ、こういう劇団なのか」と思い、日ごろ支持してくださってる方が「そう、これがこの劇団の持ち味なんだよ」と思ってくださるようなものにするのが圧倒的に正しいということだ。だから『修羅』は鵺的の直球である。名刺を作るような気持ちで書いた。

・『フォトジェニック』のあと、川添、奥野、堤、小崎の四人を中核にした公演を「トライアル」ってことにしようかと提案したら皆乗ってくれ、今回は実質その第三弾(vol.2.5ですな)にあたる。彼女たちは実力もさることながら、精神的に自立していて、個人主義者で、良い意味で他人に関心が無い、自分からすると集団創作に必要な美徳を備えた稀有な存在である。今回も大いに貢献してくれ、大いに助けられた。この先もさまざまなかたちでコラボレートしていきたいと思っている。

・上記四人に加えて、今里真、宮原奨伍、杉木隆幸、小西耕一、ハマカワフミエ、赤猫座ちこ、と良い役者が揃った。皆脂が乗っている時機だったのだと思う。稽古から本番まで、毎度あざやかに変化する芝居を観ているのはたのしかった。特にそれぞれの長女を演じたお二人にはダメらしいダメをほとんど出しておらず、それでいきなりあれが出来るのはすごいことだとなかば感心しつつ、なかば呆然と観ていた。「底力」とはああいうことを言うのだろう。

・わずか六回の本番だったが、午前11時開演の日も客席の八割が埋まり、それ以外のどの回もほぼ満席で、連日の盛況だった。作品自体の評判も良く、俳優たちの評価も高かった。作演としてはとりあえず責任は果たせたと胸をなで下ろしている。

・作家にとってはどんな経験も肥やしであり無駄はひとつもない、いついかなるときも自分を救ってくれたのは自分の才能で、だからこれまで以上にそれを大事にしていこうと思ったのが今回の個人的総括である。せいぜい大切にしますよ。自分を。これからも。

・九月本公演は『悪魔を汚せ【再演】』である。十周年記念公演で二週間。詳細後日。どうかご期待ください。

・最後に、主催のオフィス上の空の皆さん、すべてのスタッフ、参加団体、関係者の皆さんに感謝いたします。ありがとうございました。またどこかで!(文中敬称略)

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