日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

後書き二件

・『悪魔を汚せ【再演】』について書いていた文章の発表はやめることにした。あまりにもネガティヴだったからである。三兄妹を観ていて、あれは自分の心の裡だとあらためて思ったのが発端だったが、自分の生い立ちからはじめて、いまに到る人格形成について語ることは、なにかの参考にはなるだろうが、必ずしも作品の理解に必要なことではない。かつ思いのほか作者の発言に引きずられる方は多く、作者としてはできれば「作者」などというものから解放されて、好きに作品をたのしんでいただきたかった。多くの方が本作に熱中してくれた。そこに水を差したくはなかった。

・劇団単独では過去最高動員であり、上演成果も納得のいくものだった。スタッフ、キャスト、そしてお客様にはただ感謝の気持ちしかない。ありがとうございました。けっきょくのところ、言いたいのはそれだけである。

・『レネゲイズ』に関しては、『悪魔を汚せ【再演】』の本番中から稽古がはじまり、その時点では五割ほどしか書き上がっておらず、完本したのは千穐楽の朝であった。再演だからすこしは余裕があるだろうと思ったのがまちがいで、自分のところの公演ともなればなんだかんだで時間を取られ、思うように執筆ができなかった。ご迷惑をおかけしたスタッフ、キャストの皆様にこの場を借りてお詫びいたします。もうしわけありませんでした。にもかかわらず、本作にのめり込んで最高の仕事をしてくださったことに心から感謝いたします。ありがとうございました。

・ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。そして台風によって中止になった二公演にお越しいただく予定だったお客様、お目にかかれず本当に残念です。またいつか拙作をご覧いただく機会が巡ってくることを願っております。

・内容には満足している。現実性と非現実性のバランスがうまくとれた。「人の命を奪う人間よりも、信念を持ってみずから燃えることのできる人間の方が尊いと思います。それができた自分の娘を誇りに思ってください。わたしは母と母の仲間たちを尊敬しています」というさやのセリフが書けた。これが本作のすべてと言っても過言ではない。俗に流れず、されど面白く、投げかける問いの大きな一作にできたのではないかと思っている。

・そんな感じで鵺的十周年の年は暮れた。おかげさまで充実した一年だった。次は来年三月の『バロック』でお目にかかりましょう。今後ともよろしくお願いいたします。

 

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