日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

この一年

・すげえ、今年の元旦以来更新してない。放置も良いとこ。

・そんなわけで晦日である。今年一年何をしていたかといえば仕事である。ほぼ仕事の記憶しかない。世界は変わったが、自分の生活は変わらなかった。

・『バロック』を終え、関わっていた芝居は二件中止、アニメは一件放送延期、されど幸いにして仕事は減らなかった。これから先はわからない。とりあえず来年はどうにかなりそうである。

・『バロック』については「テアトロ」七月号に書く機会をいただいたので、よろしければそちらをご覧ください。三月は政府もわれわれも暗中模索の状態、そのなかでやれるかぎりのことはやり、無事公演は終了した。業界内でも感染症対策に関しての知見は深まっており、次はさらに安全な状態でお客様をお迎えできるだろう、だがしかし、だ。ただでさえビジネスにならない演劇が、いっそうビジネスにならない状況で、どこまでつづけられるのか。

・自分は演劇に関しては「はなから赤字」のつもりでやっており、その点をスタッフに叱られたりもしていたのだが、いまやそこが強みである。とはいえ資力にも限界がある。動員も順調に伸びていて、より大きな規模の公演も視野に入ってきたところで、これだ。「この先」がわからなくなった。

・もともと今年は三月以降鵺的の公演を予定していなかったのを幸い、SNSを眺め、芝居や映画に足を運び、配信を見て、やっていいことといけないこと、すべきこととすべきでないこと、どのようなかたちで来年の公演を打つのが最適なのかをただひたすら考えていた。だが、そうして考えたところで、七月の状況がどうなっているかはまったくわからないのだ。「生活は変わらなかった」と書いたが、正確には「外的な生活は変わらなかったが、内的な生活は変わった」。未来を考えることがたのしくなくなった。希望が持てなくなったというより、あらたな「希望の持ち方」がまだつかめない、そんな感じ。

・暗い言葉を並べたが、あらたな生活様式におけるあらたな希望さえつかむことができれば、人も、社会も、演劇もサヴァイヴできると思っている。来年七月の公演は、スタッフ、キャスト、そしてお客様とともにそれを探す機会にしたい。おそらくお願い事がとても多くなると思いますが、なにとぞご協力のほどよろしくお願いいたします。

・年が明けてしばらくしたら、キャストとタイトルだけでも情報公開しようと思っています。どうかご期待ください。良いお年を。