・初演時の当日パンフレットに書いた文章を再掲する。
鶴田法男監督とホラー作品の企画を考えていたとき、「これではホラーにならないよ」とよく言われました。自分の考えた構想では、登場人物があまり怪異を怖がらないのです。怪異におびえる人を見せるのがホラー映画の肝のひとつですから、これは鶴田さんのおっしゃるとおりなのでした。
なぜそういう発想になるかというと、自分が怖がりではないからです。神秘的な体験はいくつかしていますが、いずれもどこか滑稽で、恐怖したことはほとんどありません。「人のぬくもりが感じられる霊体験」ばかりなのです。そのせいかどうかわかりませんが、ホラー映画はもっぱら微笑みながら鑑賞するのが常です。
本作には幽霊屋敷も亡霊も登場しますが、多くの登場人物がその存在を受け入れており、怪異も禍をもたらすものばかりが起きるわけではありません。したがってこれはホラーではなく、されどジェントル・ゴースト・ストーリーでもない、毎度のことながら、おさめる場所が見当たらないような作品になりました。自分の心霊観、死生観にしたがって書いた、奇妙で苦い物語です。最後までおたのしみいただけますと幸いです。
・思えば世の中はコロナ禍以前であった。正確にはそのとば口にあった。新型コロナウイルス感染症について、世の人びとはまだよくわかっていなかった。同時期に公演していた別団体は会期中も飲み会をやっていた。われわれは会期中は飲み会を禁止したが、最終日の打ち上げは実施した。そうしたことがまだ批難の対象にはならなかった頃だった。一方でスズナリのロビーにポスターが貼ってあった大きな公演のほとんどは次々に中止になった。その後はご存じの通り。
・この文章はどこかのどかである。それは「あえてコロナ禍については触れない」という選択をした結果である。ひねくれ者の意地というか、得体の知れない感染症はとりあえず閉め出し、作品のことだけで世界を閉ざそうと思ったのだった。
・二年が過ぎて気が変わり、本作の改訂作業は作中にこめられた「現在」と「世界」を掘り返す作業であった。ひさびさに読み返すと、日々いま感じているようなことを先取りする台詞があったり、あるいはこの感覚はすでに古いなと思うような表現があったりで、自分と世界の変化のスピードを実感させられた。台詞も変えたしト書きも変えた。ト書きはお客様の目に触れないものだが、よろしければ販売台本をご確認いただければと思う。初演時台本も販売するので、読み比べていただくのも一興だろう。
・自分はひたすら「家族否定」と「恋愛不能」の物語を書いてきた。これから先も書くだろう。だが娯楽作品のフォーマットでそれをやるのは、しばらくお預けになると思う。今回の改訂作業において、世界の総体としての複雑性を描くことと、シンプルなロジックを必要とするエンターテインメントの作法に折り合いをつけることの困難を感じた。そろそろ「次」へ行く頃だなと痛感したのである。奥野亮子さんと駆け抜けた五年間は、同時に福永マリカさんとも駆け抜けた五年間であった。今回の再演は彼女たちと作ってきた作品群のピリオドとなる。大袈裟に聞こえるかもしれないが、自分にとってはひとつの時代の終わりである。この間の拙作を愛してくださった方々にはぜひ見届けていただきたい。ご高覧を乞います。
演劇ユニット鵺的第15回公演 バロック【再演】
作 高木登(演劇ユニット鵺的)
演出 寺十吾(tsumazuki no ishi)
2022年6月9日(木)〜19日(日)
155-0031
東京都世田谷区北沢1-45-15
03-3469-0511
[キャスト]
岸田大地
小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)
笹野鈴々音
白坂英晃(はらぺこペンギン!)
常川博行
中田顕史郎
野花紅葉(モミジノハナ)
葉山昴
吉村公佑(劇団B級遊撃隊/Ammo)
[スタッフ]
舞台監督 田中翼・伊藤新
演出助手 中山朋文(theater 045 syndicate)
稽古場代役 函波窓(ヒノカサの虜)
アクション指導 宗像拓郎(A&Cスタジオ・ユニットことのは)
照明 阿部康子・松田桂一
音響 岩野直人(STAGE OFFICE)
音楽 坂本弘道
舞台美術 袴田長武+鴉屋
宣伝美術(フライヤー・当日パンフレット) 羽尾万里子(Mujina:art)
仮チラシデザイン 今治ゆか
舞台写真撮影 石澤知絵子
ビデオ撮影 木村聡志・浪谷昇平
webデザイン 成川知也(MU)
衣装 上岡紘子
制作 鵺的制作部・J-Stage Navi
稽古場制作 吉水恭子(芝居屋風雷紡)
制作協力 contrail
キャスティング協力 Nana Produce
協力 劇団B級遊撃隊/芝居屋風雷紡/動物自殺倶楽部/はらぺこペンギン!/ヒノカサの虜/フロアトポロジー/モミジノハナ/Ammo/MU/theater 045 syndicate/tsumazuki no ishi/アイエス・フィールド/アクトレインクラブ/イマジネイション/ザズウ/フォセット・コンシェルジュ/フリップアップ/レディバード/ワタナベエンターテインメント/Pita.inc/Spacenoid Company/Mujina:art
企画・製作・主催 演劇ユニット鵺的
芸術文化振興基金助成事業
[タイムテーブル]
6/9(木) 19:00
6/10(金)19:00
6/11(土)14:00/19:00
6/12(日)14:00
6/13(月)14:00/19:00
6/14(火)休演日
6/15(水)19:00
6/16(木)14:00/19:00
6/17(金)19:00
6/18(土)14:00/19:00
6/19(日)14:00
[上演時間]
2時間(予定)
[注意事項]
・受付開始は開演45分前、開場は開演の30分前です。
・未就学児童のご入場はご遠慮ください。
・光の明滅が激しい演出、大音響による演出がございます。あらかじめご承知置きください。
・開演時間を過ぎてからのご来場はご指定のお席にご案内出来ない場合がございます。あらかじめご了承下さい。
・新型コロナウイルス感染症拡大等の影響で、公演内容を変更する場合がございます。ご来場直前に公式HP、Twitterを必ずご確認ください。
[チケット]
一般発売 2022年4月23日(土)A.M.10:00~
全席指定
前売 5500円
当日 5800円
U25割引 4500円(枚数限定・J-Stage Naviでのみ販売)
[発売]
(Lコード:31879)
https://l-tike.com/search/?keyword=31879
J-Stage Navi 03-6672-2421 (平日12:00〜18:00)
[問い合わせ]
J-Stage Navi 03-6672-2421 (平日12:00〜18:00)
[公演当日問い合わせ]
ザ・スズナリ 03-3469-0511