日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

私の好きな映画・洋画編

・先日の打ち上げの際、テツタさんの発案で全員の連絡先と生涯のベスト映画を記したリストを作ろうということになった。連絡先はともかくベスト映画はおいそれとは選べない。しかたなくその場で二本選んだが、消化不良なので、ここにあらためてリストをならべておくことにした。2009年8月17日の気分で選んだものだから、たぶん明日、たぶん来月、たぶん来年にはまったくちがった内容になっているはずである。キリがないので、本日は洋画のみ。順不同、思いつくままに上げた。


気狂いピエロ
高校生のとき、テアトル池袋で「ディーバ」と二本立てで見た。ラストの衝撃にはいまだに幻惑されつづけている。

恋のエチュード
トリュフォーではこれだなあ。血にまみれたシーツを淡々と映すおそろしさ。タラ公はトリュフォーなんて退屈とほざいてるようだが、そこがあんたの甘さなんだよと言いたい。

汚れた血
カラックスではこれですな。二十歳そこそこでブラブラしてた頃、なんの予備知識もなく見て、驚いた。

ディーバ
ヌーヴェル・ヌーヴェルバーグが斬新だったのは、どれもがみなふつうに娯楽映画だったことである。

ニキータ
「レオン」よりはこっちですわ。ベッソンもこの頃までだったなあ。

冒険者たち
こないだDVDで見返したら、後半のレティシアの不在がものすごく沁みた。ああいう男女関係に憧れる41歳。

アシク・ケリブ
パラジャーノフではこれ。「白馬に乗った聖人」の登場場面は抱腹絶倒である。

赤い砂漠
「欲望」も「砂丘」もいいけど、アントニオーニではこれが好き。荒野の工場、荒涼の美、リチャード・ハリス

自由の幻想
ブニュエル好きになったきっかけの一作。小難しい作品かと思いきや不条理ギャグの乱れ打ちで腹の皮がよじれた。

ソドムの市
パゾリーニの方ですよ。吉田伸が「あんたの作品に通じるものがある」といって貸してくれたのだが、通じるだろうか、さすがにこれには負けた。そしてまだ返却してないや、すまん。

霧の中の風景
あのレイプシーンはいくらなんでも見ていて辛いし、倫理的にもどうかと思うが、そういうことを超えてなお傑作と言わざるを得ないですね。

焼け石に水
フランソワ・オゾンに、というよりファスビンダーに驚いたのだな。これ書いたの二十歳って。たったの二十年で、彼はどんな世界を見てきたのだろう。

ヘザース
マイケル・レーマンの異形の傑作。いまだにDVD化されないのは納得がいかない。

クレイマー、クレイマー
好きなんだよ、悪いか。

カンバセーション…盗聴…
コッポラではこれです。このころのアメリカ映画はほんと見るべきところ多々ですね。

ミーン・ストリート
デニーロのダメさ加減に泣く。いるよ、ああいう奴。

フューリー
例のスローモーションのところだけ年中見ている。

ニューヨーク1997
これぞ男の映画ですわ。女子に見せたらアホ臭いとか言われそうだが、ほっといてほしい。

未知との遭遇
スピルバーグでなんか一本と言われたらこれである。DVDで削除されたシーンを見たら、ほとんどトリュフォーがらみのバカ場面ばかりで笑った。

殺しが静かにやって来る
なんの救いもないのだが、なぜか後味があまり悪くないという不思議な映画である。DVD特典として、幻のハッピーエンディングバージョンの映像が収められているが、これが画質がおそろしく悪いうえ、音声も入っていないため、むしろ悪夢のように見えて怖い。

ダークマン
サム・ライミではこれ。

マチネー
ジョー・ダンテではこれ。

フェノミナ
アルジェントではこれ。

狩人の夜
祝再発。

時計じかけのオレンジ
何度見ても飽きぬ。

アンブレイカブル
シャマランではこれ。つうか、ほんとこれ一本きりのひとだよな。

ファイトクラブ
master piece !

LA大捜査線・狼たちの街
低迷期のフリードキンが突然放った傑作。吉田伸が教えてくれた一本。これは必見です。

ブルー・ベルベット
公開当時、とても救われた記憶が。リンチに生きる希望を与えられた倒錯した輩のひとり、それが自分である。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記
オリジナルよりトム・サビーニによるリメイクの方を取る。ロメロの哲学をロメロ以上に表現できてるんじゃなかろうか。

サブウェイ・パニック
なんつったってラストである。アメリカ映画の語り口がまだまだ豊かだった頃の傑作。音楽も最高。

ガルシアの首
徒労を徒労として描くことってけっこう難儀だと思うんですが、これはみごとに成功してますね。

パニック・イン・スタジアム
ようやっとキングからDVD化。「地獄」一期の二十三話は、実はこれをやろうとしたのであった。

カプリコン・1
もう大好き。娯楽映画の理想形。

シャレード
好きなんだよ、悪いかっつの。脚本は「サブウェイ・パニック」と同じピーター・ストーンである。

裸のキッス
頭っから客の関心を掴んで放さないテクニックを学びたければサミュエル・フラーの映画を見ると良い。特に本作は勉強になります。

脱出
ハワード・ホークスはどれも好きなんですが、やはりこれが一番でしょうか。ラストのバコールがカッコいい。カッコいい女の人が出てくれば、もうそれだけで満足です。

北北西に進路を取れ
ヒッチではこれでしょう。ベタなんですよ、ぼくの趣味は。

死刑執行人もまた死す
ラングもすごいけど、シナリオがまたすごいんですわ。

市民ケーン
これは外せん。


てなわけで、あっという間に40本だ。こんなわけだから一本なんて選べないんですよ。