日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

花咲か爺さん

むかしむかし、あるところに、ひとりのおじいさんが住んでいました。 おじいさんは一匹の黒犬を飼っていました。 それは犬というには大きすぎ、目は金色に光って、愛らしさよりも禍々しさを感じさせる生きものでしたが、おじいさんはとてもかわいがっていま…

田舎のネズミと都会のネズミ

むかしむかし、ある田舎に、一匹のネズミが住んでいました。 ネズミは土に落ちた大麦や、芋のつるを食べて、つましく暮らしていました。 ある日、都会に住むネズミがやって来て言いました。 「そんな食事はもうやめて、いっしょに都会へ来ないか。美味しくて…

すっぱいブドウ

むかしむかし、あるところに、一匹のキツネが住んでいました。 ある日、キツネは農夫がブドウを収穫しようとしているところに出くわしました。 キツネはブドウについての知恵があったので、そのブドウがまだ収穫する時期にはないことがわかりました。 農夫に…

白雪姫

むかしむかし、ある国に、嫉妬深い王妃が住んでいました。 王妃は国王の後妻で、亡くなった前妻とのあいだにうまれた白雪姫を憎んでいました。 王妃は真実を語る鏡にたずねました。 「この国でいちばんうつくしいのは誰だ?」 王妃はけっしてうつくしくなく…

猿蟹合戦

むかしむかし、蟹の父親は非道な猿のいじめによって殺されました。 蟹は、猿にうらみを持つ臼、栗、蜂とともに猿をおとしいれ、ついにその命を奪いました。 その後の顛末を、ある高名な作家が小説にしていますが、あれは事実ではありません。 蟹一味は全員逮…

金太郎

むかしむかし、ある山に、若い夫婦が住んでいました。 夫婦には金太郎という五歳になる男の子がいました。 金太郎はおそれを知らず、親のまさかりを奪い、動物たちにたたかいを挑みました。 夫婦が飼っていた犬を殺し、猫を殺し、それだけでは飽き足らず、山…

桃太郎

むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。 おばあさんが洗濯をしていると、大きな桃が流れてきました。 おばあさんは桃を持ち帰り、おじいさんといっしょにふた…

浦島太郎

むかしむかし、ある浜辺で、一匹の海亀が子どもたちにいじめられていました。 そこへ浦島太郎という漁師が通りかかりました。 太郎は子どもたちを追いはらい、亀をたすけました。 亀はお礼に太郎を竜宮城へ連れていくと言いましたが、 「八十歳になる母の介…