日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

彼らには時間がある

例の耳かき嬢が亡くなったそうで、しばし凹む。自分の人格の問題に他人を巻き込むのに無頓着な男に出会ってしまったことによる悲劇だが、この犯人、自分と同い年であることが痛い。俺だってまともに恋愛してないし、ろくに遊んでいないけれど、こういうとこの女の子とのつきあい方や距離の取り方はわかる。さすがにわかる。四十一年生きてりゃわかる。それがわかってないのがわからない。四十一年間、どこにいて、何をしていたのか。何を見て、何を学ばなかったのか。ふたり殺して、自分の人生を潰した。三人の人間が失われたことで、何人の人間が不幸になるのか。愚鈍な男だ。愚鈍の犠牲になったふたりの女性が気の毒でならない。
・いったいストーカーという者はヒマなのである。時間があるから思い詰めるし、いらぬ想像もする。余暇があるからよけいな行動もする。ネガティブな思考に陥りがちな人は、なんでもいいから身辺を忙しくされよ。時間がないとつまらぬことを考えている余裕もなくなる。女性はヒマそうな男には近寄らぬこと。出来る男はたいがい多忙である。
・今日は打ち合わせ。帰りにトシゾーネモトと酒を酌み交わしながら人生について語り合う。駄目なわれわれだが、とりあえず仕事しようという結論になる。まあようするにそういうことである。