日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

アンヴィル!

・メタルはまったく興味の外で、アンヴィルという名前も小耳に挟んだ程度の知識しかなかったのだが、この映画には参った。50を過ぎても成功する夢を捨てず、客の入らないツアーにも前向き、しがない仕事にいそしみ、若者のような情念を歌いつづける。ドキュメンタリー版「スパイナルタップ」という形容もあり、たしかに笑えるところは多々あるのだが、正直心底笑えなかった。演劇なんてやってるみなさん、たぶんあなたたちも全員他人事ではないはず。
・残酷なのは、なまじ才能のない人たちならまだしも、彼らには才能があるということである。セカンドアルバム「Metal on Metal」は名盤と呼ばれているのに、彼らはそれに見合うだけの成功を手に入れられなかった。そこがひどくせつない。なにかがちがっていたのだが、いまさらそれをどうすることもできない。だから前に進むしかない。いまできることをやるしかない。

「誰もが年を取る。腹は出て顔の肉は垂れ、髪は抜け時間はなくなる。だから今やる。今から20年後、30年後、40年後には人生は終わるんだ。やるしかない」
(作中より)

そういうことである。
・ラストは日本公演の映像だが、これがやたらと美しく、展開含めてとても感動的だった。そういや「スパイナルタップ」のラストも日本公演だったっけ。
・本作はわたなべりんたろうさんが熱心に推挙されていて、自分も応援コメントを寄せたりしました。10/24公開。作中製作過程が追われている最新作「This Is Thirteen」はアマゾンで購入できます