日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

みのキン

・18日は荒井さんの誕生日で、稽古後はそういう趣旨の飲み会であった。こちらは毎週定例のホン打ちがあり、この日はシナリオ五本打ちであったので、遅くなるのはわかっている。だから残念ながら欠席しますと言ったところ、
「明日もどうせこんな時間(注・一時過ぎ)までやってるんだから、仕事終わってからでも間に合うわよね(美代子先生)」
「おまえ、ここで来なかったら、この先鵺的出てもらえねえぞ(吉永)」
「お待ちしてます(荒井)」
と、誰ひとりとして「無理しないでください」とは言わなかったため、無理せざるを得ない羽目に。10時過ぎに上井草を出て、用賀に着いたのが11時半前。「『あいつ律儀だなあ』って、みんな言ってましたよ」と平山に言われる。全員前日に言ったことを忘れているらしい。不良中年ども。
・着いたらもっぱらみのりさんと話す。真面目な話とふざけた話の波状攻撃である。
「お肴(注・みのりさんは自分をこう呼ぶ)のブログにわたしのこと書いてあったでしょ」
「うん、」
「わたしのブログ読んだ? いちばん新しいやつ」
「ああ、あの、サイバンインコの
「どう思った?」
「え?」
「自分のとこにわたしのこと書いたのに、なんでわたしが呼応して書かないんだろうって思わなかった?」
「ああ……別に思わなかったけど」
「思えよ! 作家だろ!? みのりさん、なんで俺のこと書かないんだろって、心揺さぶられろよ!」
「はあ……」
「お肴は幸せもんだよ、××がいて○○がいて(注・自主規制)わたしがいて、おまえの人生、チョモランマだ! 人生の絶頂だよ!」
「……」
ムチャクチャである。荒井さんはひたすら平山の腕毛をライターで焼いてるし。
・帰りは当然のようにみのりさんをタクシーで送っていくことになる(注・方向はまったく逆である)。平山も同乗(注・まったく方向は異なる)。
・以前、みのりさんは「幻戯」に批判的だったらしいと書いたが、本人から直接言葉を聞いたのははじめて。批判というより実に冷静な分析で、「そいつはまったくその通りだよ」と言う。
み「おまえ、あんなの観りゃあ、一発で、ああ、こいつは風俗なんか行ったことないんだろうなってわかんだよ」
高「ああ、」
み「キヌキヌ(注・みのりさんは平山をこう呼ぶ)、おまえは出ててどうだったんだよ」
平「え、俺ですか」
み「どうなんだよ」
平「いや、俺はけっこう行ってるんだと思ってましたけど」
み「そんなわけねえだろ、行ってねえんだよ」
平「そうですかねえ」
み「だからおまえはダチョーっぺえんだよ」
平「脱腸ならなったことありますけどね」
運転手「(笑)」
平「面白かったですか」
運「いや、なんでそうなんのかと思ってさ」
み「脱腸って腸出てくるんでしょ?」
平「いや、あの、××××の方に入ってくるんですよ」
運「腹が膨れんだよねえ、あれは」
み「そうなんですか」
そんな具合に運転手さん交え熱い脱腸トークが展開されるなか、みのりさんの地元に到着。降りたみのりさんが踊りながらこちらに手を振っているのを見て、
運「面白いひとだねえ」
高「そうですねえ」
運「若いよねえ」
高・平「いや、×××××××××(注・自主規制)」
・その後平山を送り、帰宅は三時。タクシー代、……。「暗黒地帯」の穏やかな稽古の日々がなつかしい。