日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

ファン歴二十六年

大貫妙子 Pure Acoustic 2009 @ JCB HALL。このシリーズも二十二年つづいたそうで(!)、メンバーの都合により毎年恒例の行事としては最後とのこと。久しぶりにこの世にふたつとない歌声を堪能してきた。
・十五のときにその音楽に触れて以来、大貫妙子は自分の中で女性歌手最高峰でありつづけている。近年その曲世界はより間口が広く、より平易明快になり、ひどく澄明で純度が増した。大貫妙子の創作の軌跡は、気取りや衒い、ある種の過剰さを慎重に排除してきた歴史であるので、これには納得する。会場には比較的年配の方が多く(特にご夫婦)、昔からのファンというより最近その音楽に触れて大貫妙子のファンになったような方々に見受けられる。コアなファンが発する妙な空気が希薄で、とてもいい客席になっていたと思う。
・とはいえやはり、「黒のクレール」や「夏に恋する女たち」や「若き日の望楼」あたりに身を乗り出してしまうのは、自分こそがその種のファンだからで、シュガーベイブが小一、中三でやっとその音楽に出会った自分はファンとしていつまでも新参者のつもりでいたが、もはやすっかり古参なのだと実感する。良いコンサートだった。以前にも増して「詞」が届いてきたのが印象的だった。
・今回は残念ながら歌われなかったが、自分がいちばん好きなのがこれ。アレンジは坂本龍一です。