日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

不運というには有名な

復刊ドットコムのメルマガにこうあった。

(前略)
大ヒット御礼の「藤子・F・不二雄大全集」から待望の新刊『バケルくん』が登場です。本書『バケルくん』は、人気タイトル「ドラえもん」や「オバケのQ太郎」とは一線を画す異色のSF漫画としてファンの間ではカルト的な人気を誇っています。

初期のてんとう虫コミックス2巻には、巻末に『ジャングル黒べえ』が収録されていたことにより、半ば発売禁止の事態となったり、ドラえもんとの共演作品「ぼく、桃太郎のなんなのさ」(『ドラえもん 5』収録予定)が映画化された折に、『バケルくん』が登場メンバーから外されてしまうといった、実に数々の憂き目を見た不運の作品、それが『バケルくん』なのです。
(後略)

・おおむね事実である。ただ、カルト的な人気かどうかはわからないし(アニメ化されてすっかり有名になったが、古くからの読者からすると「キテレツ大百科」の方がよほどカルト作品だった)、不運というほど無名でもない。アニメになってないのが判断基準ならそのとおりで、映像化はこれっきりである。若い方に馴染みが薄いのは事実かもしれぬ。けっきょく自分が年取ったんだなあと思う。
藤子・F・不二雄大全集は買いつづけている。ここから受けた影響の強さに自分で驚いている。安孫子先生の作品は暗いようで明るいが、藤本先生の作品は明るいようで暗い。つまり藤子作品には陰影が豊かである。いろいろ仕事で足掻いてはいるが、もっぱら影を好む自分はしょせん釈迦の掌の上の孫悟空というか、俺、ずっとおんなじ場所にいつづけてるんだなっていう感じ。運命が決まったのは中学時代と思っていたけれど、実は小学生のときにすべてが決まっていたのかもしれない、それくらい甚大というか。
・そんなわけで自分の中では手塚治虫より藤子不二雄の方がまちがいなくビッグネームだ。でも、そういうひとはけっこう多いんじゃなかろうか。世代の問題だけではないと思う。ほかならぬ手塚先生本人がこう言っている。