日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

たまには

・またしても一ヶ月以上空いてしまった。書くことはあるようでなく、ないようである。あるんだから書けばいいのだが、なぜか吐き出す気になれない。
・井土さんとの対話は毎度のことながら反省多々で、井土さんがきわめて論理的な方なのに対して自分があくまでも感覚的すぎたとか、単純に声が枯れたとかもそうだが、佐々木守も左翼、馬淵薫共産党員だった過去があり、そのあたりからつなげて井土さんの法政大学時代の話をうかがえばよかったと思いつくも後の祭りだったし、二時間ドラマの話もそれに特化してお話ししたいくらいだったが、これはまた別の機会とあきらめるほかなかった。その後の飲み会は楽しかった。前川麻子さんとの知遇も得られたし、長宗我部陽子さんにもご挨拶できたし、花咲政之輔さんは圧倒的だった。いやもう、ほんとにすごいのだ、あの人。抱腹絶倒だった。
・映画一揆終結し、ポスト一揆ともいうべき新作『ピラニア』がポレポレ東中野で上映されている。このところ映画業界も休館、倒産が相次ぎ、暗い話題ばかりのなかで、一揆はみごとに明るかった。井土さんが立派なのは若手を育てていること、そしてそうした身内の力をもって一揆を立ち上げていながら、身内だけで盛り上がっている感がまったくないことである。これはすべて井土さんの人格であり人柄の所以と思う。来年以降、いかなるかたちであれ、一揆のさらなる継続を望む。皆様、お疲れさまでした。
・都条例に関して、売り場を分けるのも、場合によってはビニールをかけるのにも賛成である。だが、いかにも規準が曖昧で、曖昧な規準の犠牲になるのはたいがい繊細な作品と決まっている。自分がかかわったものでいえば『恋風』はどうなる。原作者の吉田さんはきわめて真摯に近親相姦を扱い、われわれスタッフもその志を受けて真摯にアニメ化に取り組んだ。もし都条例下であったなら、連載も映像化もままならなかったかもしれぬ。こうした具体的な議論もなく条例は可決されてしまった。権力は『恋風』の繊細さを理解するだろうか。いまのところは神のみぞ知る。