日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

いまさらながら公演終了

・最終的には総計744人のお客様にお越しいただく大盛況だった。座組が強力だったというのはむろんあるのだが、それにしてもなぜここまで大入りだったのか分析しきれていない。寺十さんもよくわからないという。ある種の奇跡が起きたらしく、それは内に外にそれとなく実感していたことだったが、不思議なもので数として具現化すると実感がわかない。ともあれご来場いただきました皆様に心から感謝いたします。そしてご来場をお断りせざるを得なかった皆様に心からお詫び申し上げます。
・次回は通常営業であるから今回よりも動員が増えるということはありえず、『昆虫系』を観て気に入ってくださった方を裏切らず、かつ現在の自分の傾向を打ち出してそれなりのものを創らなければならないという非常に面倒な事態になってしまった。だがそんなことよりも、どんなカンパニーでもいつかはぶちあたる「壁」にようやく対峙できた喜びの方が大きい。脚本家として仕事が楽しくなってきた時期とタイミングが合ってよかった。ちなみに情報はこちら。平山と外山は九月のミナモザを経ると四度目の共演、菊地さんと平山は三度目、宮嶋さんと平山も三度目、菊地さんと橋Kにいたっては何回共演してるかわからないほどで、他の皆さんもそれぞれ各所で共演したり顔見知りであったりするはずだが、そうした積み重ねの強みが良いかたちで発露できるようにしたいと思っている。ご期待ください。
・けっきょく初演のキャストで今回観に来てくれたのは池畑さんだけだった。とはいえ大半が消息もわからないので仕方ないことである。池畑さんは「これが本当の『昆虫系』だと思います」と言ってくれた。初演には初演の良さがあり、なにが「本当」なのかは自分にもわからない。ただ今回の再演はまちがいなく「本物」だった。打ち上げの席で前川さんから「(わたしの役は)深浦(加奈子)が生きてたら深浦の役だったね」と言われ、なんだか急に話が大きくなってんなと思いつつ、すぐにその思いを打ち消した。寺十さんが演出し、これだけのキャストのみなさんに来ていただいているのだから、これはすでに大きな芝居なのだ。いやでもステージを上がってしまったのだ。徒に恐縮したり卑下したりすることは無礼だし不義理である。もう降りられない。堂々と前を見て先に進むだけである。今後ともどうかよろしくお引き立てのほどお願い申し上げます。