日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

やっと書いた

こちらです。肩の荷が下りました。
・医者行って整骨院行って、気づいたら夜。仕事は進んでいない。参った。
太田愛さんが先日亡くなった吉本隆明のことを書いておられ、自分も吉本のことをふと思い出した。二十代のなかばに安原顯さんと中条省平さんが講師をつとめておられた創作学校に一年通ったのだが、そこの第一回の特別講師が吉本だった。終了後、帰りがけに会釈をしたら、笑顔で会釈を返して下さった。毎週豪華な講師陣が入れ替わり立ち替わりやってきたが、そんな態度で接してくれたのは吉本隆明ただひとりである。篤実なお人柄なのだと感じ入った。『夏を越した映画』に収録された森田芳光との対談の中で、吉本は「原作ものを手がけるとき、監督はその読後感に忠実であるべきだと思う(大意)」と述べている。それは脚本家にとってもおなじだと思った。以後、プロになってからもその言葉は常に心の裡にある。まちがいなく自分を作ってくれたおひとりだった。ご冥福をお祈りします。