日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

無為

・なんにもない一日だった。というかなんにも出来ず、一行も書けず。インド料理屋でメシ食った。それだけである。こういう日もある。
・別冊映画秘宝『衝撃の世界映画事件史』を読む。表紙がむかしの別冊宝島みたい。前半のコーマン特集も良いが、後半の「地獄の映画事件史」の方がはるかに興味深いのは性としか言いようが。とはいえこの歳になると既に知ってることが多く、若い人の方が興味深く読めるだろう。「光山昌男伝説」は面白かった。こういう人はどこにでもいるんだな。俺が小学生の頃、『首都高の半分はうちの持ち物』『藤子不二雄とは昵懇の間柄で、彼らは必ず年始の挨拶に来る』と駄法螺ばかり吹いている奴がクラスにいて嫌われていた。ここに書けないことも多々あり、全人生を通じて出会った最低の人間の一人だが、一方で俺に楳図かずおの『恐怖』や『怪』、藤子不二雄の『魔太郎』や『変奇郎』を読ませてくれたり、ブルース・リーの素晴らしさを教えてくれたり、YMOのレコードをいちはやく聴かせてくれたりしたのも奴だった。光山が無茶苦茶な言行動の一方で『キン・ザ・ザ』を日本に配給したように、奴が俺にもたらした事々は多い。そいつがいなければたぶんこんな仕事してないんじゃないか。何事にも常に光と影はある。