日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

どんな脚本家になりたいの?

・コンテストに入賞した当時は局の偉い人に会うたびに聞かれた言葉だ。さすがに最近では聞かれなくなったが、あまり自分で言葉にしたことがなかったので、あらためて書いておく。
ジョン・セイルズやデビッド・マメットみたいになりたいです。完。
・ようするにジャンル作品もそうでないものもどちらも好きなのでどちらもやりたいということに尽きる。『ピラニア』や『アリゲーター』のようなシナリオを書きながら『ベイビー・イッツ・ユー』や『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』のような映画も撮る。『アンタッチャブル』や『RONIN』のようなシナリオを書きながら『アメリカン・バッファロー』や『グレンギャリー、グレン・ロス』のような芝居も書く。重要なのは前者の仕事が金のためだけでなく「好き」でやっているということである。好きでやっているなら魂を売ることにはならない。書きたくないものは書きたくないし、書けないんですよ、当然ながら。
・この「どちらもやりたい」っていうのが意外と理解されない。素人の頃はそういう人はけっこういっぱいいるんだろうと予断してたが、玄人になってみたらなんというか……好き嫌いや趣味嗜好が激しく、了見の狭い方が多かった。損してると思うんですけどね。「好き」が多けりゃ多いほど人生はたのしいのに。
・日本ではジャンル作品を手がける場が少なく、ジャンル志向のある脚本家はアニメや特撮に向かうことになる。実写でウマの合うPにはついぞお目にかかったためしがないが、アニメでは何人かの信頼できるPに出会うことが出来たし、なにより大森さんと出会えたのは大きかった。脚本家の側から言うのはおこがましいが、この仕事はお互いに愛とリスペクトがないと無理なんですわ。懲りずに自分を指名しつづけてくれている皆さんに感謝しています。
・したがって現在の自分のキャリアにはおおむね満足している。演劇の方で映像のキャリアをあまり謳わないのは、映像のキャリアを誇って演劇に参入してくる方々の芝居がことごとくつまらないから(特に日本では。むろん例外はある)で、それと同類と思われたくなかったから。これは前にいた劇団の頃からそう。演劇は演劇でゼロから認めてもらおうという志だった。それが成功しているかどうかはわからないが、いまでもその気持ちは変わらない。
・自分の当面の目標は演劇でもお金をいただくこと(鵺的の経済的成功だけでなく余所からも発注があること)と、後進に高木みたいな活動をしたいと思っていただけるようになること。近いだろうか遠いだろうか。わからないけど、ま、そんな感じです。