日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

レネゲイズ

・『悪魔を汚せ【再演】』のあとがきは下書きフォルダに入ったままで未完である。書いたり消したりしているうちにこちらの初日が迫った。

・八十年代半ばに起きた事件にインスパイアされたが現実に取材はしていない。もともとは、『幻魔大戦』の愛読者でありオウム真理教事件を通過した同時代人として、自分の新興宗教観を総括しておきたいという意図があった。社会性の強い芝居にするつもりが、作品のベクトルは外ではなく内に向かった。これは新新宗教を巡る内省の記録である。やはり自分は……と、これ以上書くのは控える。メインヴィジュアルの三人のうち誰が「神の子」なのか、「レネゲイズ」というタイトルの意味は……作者の言葉が必ずしも正解とは限らない。あなたの正解を見つけてほしいと思う。

 

レネゲイド(renegade)とは、背教者、変節者、裏切り者を意味する言葉である。

 

Nana Produce Vol.11
『レネゲイズ』
作  高木登(鵺的)
演出 寺十吾(tsumazuki no ishi)
2019年10月11日(金)〜15日(火)
赤坂RED/THEATER

 

[ストーリー]
十五年前——宗教団体「無欲の土地」の施設がある浜辺で、女性信者四人が集団焼身自殺をした。
彼女たちは「神の妻」と呼ばれた者たちで、病死した教祖の後を追ったとされた。
現在——事件の関係者たちが新たな教団施設に集められる。
それは団体側が企画した、和解の済んでいない遺族との意見会だった。
その死を受け入れられぬ者、ただひたすら悪罵のかぎりをつくす者、それでもなお和解をあきらめようとしない者。
交錯する現在と過去。
先の見えない議論の果てに、かれらがたどりついた場所はどこだったのか。
「奇跡」とは、「宗教」とは、「信じること」とはなにか。
すべての観客を迷宮にいざなう、現代の神話。

 

[キャスト]
さとうほなみ
鳥越裕貴
葉山昂
玲央バルトナー
中原和宏
今井あずさ
日暮玩具
奥野亮子
堤千穂
木下愛華
坂口佳澄
加山徹

 

[スタッフ]
舞台監督 玉城忠幸
照明 青木大輔
音響 岩野直人
美術 袴田長武
演出助手 中山朋文
宣伝美術 Shingo Kurono
宣伝写真 MASA HAMANOI
Hair RITSU
MAKE-UP FUYUKi.Chiho Hatae
スタイリスト YOSHIKI
制作補 白鷺紀子 林彬 YUKIKO
企画・製作 Nana Produce

 

[会場]
赤坂RED/THEATER
107-0052
東京都港区赤坂3-10-9赤坂グランベルホテルB2F
03-5575-3474(事務所)
03-5575-7132(ロビー直通・公演中のみ)

[タイムテーブル]
10/11(金) 19:00
10/12(土) 14:00/19:00
10/13(日) 14:00/19:00
10/14(月) 14:00/19:00
10/15(火) 14:00
※受付開始は開演の45分前、開場は30分前。
※未就学児童入場不可。
※開演時間を過ぎてからのご来場はご指定のお席にご案内できないことがありますのでご了承ください。

 

[チケット]
全席指定
前売 6000円
当日 6500円
http://ticket.corich.jp/apply/99959/

 

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悪魔を汚せ【再演】

・鵺的で初演した作品の再演は初めてである。他にも再演したい作品はあるのだが、いろいろと事情があって、思うようにはなかなかいかない。『悪魔を汚せ』もようやくなんとか再演にこぎ着けた。初演が好評だったのと、チラシのキービジュアルになってくれた三人がそれぞれの役をできるうちに、ぜひもういちどやっておきたかったのだ。このキャストで上演されるのは、おそらくこれが最後になるし、もし再々演の機会があっても、それはかなり先のことになるだろう。

・再演にあたって、若干の改訂を施した。説明が重複する箇所や、不要と思われる箇所を削った程度である。ひさしぶりに向き合ってみると、われながら荒っぽいホンだった。この荒さを現在の自分の技術で改訂しすぎると、それはそれで初演の良さが失われてしまう。だから直すのは最低限にとどめた。初演の映像は観劇三昧でご覧いただける

・何かが変わると皆思っている。だが何がどう変わるのかは皆わかっていない。稽古を前にして、皆戦々恐々としている。同時に期待に胸躍らせている。去年の夏も忘れられないものになったが、今年の夏もそうなるだろう。やはりただの再演ではなく、新しい何かが生まれるのだと思う。新生『悪魔を汚せ』をお客様と劇場で共有できる日をたのしみにしております。

・以下、公演情報です。おかげさまでU25割は完売いたしました。

サンモールスタジオ提携公演
鵺的旗揚げ十周年記念
第十二回公演『悪魔を汚せ【再演】』
作  高木登(鵺的)
演出 寺十吾(tsumazuki no ishi)
2019年9月5日(木)〜18日(水)
サンモールスタジオ
160-0022
東京都新宿区新宿1-19-10 サンモール第3M-B1

[キャスト]
秋澤弥里
秋月三佳
池田ヒトシ
奥野亮子(鵺的)
祁答院雄貴(アクトレインクラブ
斉藤悠(アクトレインクラブ
釈八子
杉木隆幸(ECHOES)
高橋恭子(チタキヨ)
福永マリカ
水町レイコ

[スタッフ]
舞台監督=田中翼・鳥巣真理子
演出助手=中山朋文(theater 045 syndicate)
文芸協力=中田顕史郎
照明=千田実(CHIDA OFFICE)
音楽=坂本弘道
音響=岩野直人(STAGE OFFICE)
舞台美術=袴田長武+鴉屋
宣伝美術=詩森ろば(serial number)
宣伝美術写真撮影=橋本恵一郞
宣伝美術ヘアメイクディレクション=るう(ROCCA WORKS)
舞台写真撮影=石澤知絵子
webデザイン=成川知也(MU)
ビデオ撮影=安藤和明(C&Cファクトリー)
制作=鵺的制作部・J-Stage Navi
制作協力=contrail
協力=チタキヨ/tsumazuki no ishi/(有)アクトレインクラブ/オスカープロモーション/(株)クロスコール/有限会社ザズウ/(株)ボックスコーポレーション/合同会社ミッシングピース/ECHOES/木下祐子
企画・製作=鵺的

[タイムテーブル]
9/5(木)19:30
9/6(金)19:30
9/7(土)14:00/19:00
9/8(日)14:00
9/9(月)14:30/19:30
9/10(火)休演日
9/11(水)19:30
9/12(木)19:30
9/13(金)19:30
9/14(土)14:00/19:00
9/15(日)14:00/19:00
9/16(月・祝)14:00
9/17(火)19:30
9/18(水)18:00
上演時間 約1時間50分(初演時データ)

[注意事項]
※ 受付開始は開演45分前、開場は開演の30分前です。
※ 未就学児童のご入場はご遠慮ください。
※ 開演時間を過ぎてからのご来場はご指定のお席にご案内出来ない場合がございます。予めご了承下さい。

[チケット]
一般発売 7月19日(金)
全席指定
前売 4800円
当日 5000円
U25割引 3800円(9月5日~9月9日迄限定販売・J-Stage Naviでのみ販売)※完売しました

[発売]
ローソンチケット
tel.0570-084-003(Lコード:35360)
tel.0570-000-407(10:00~20:00)
http://l-tike.com

J-Stage Navi  http://j-stage-i.jp(PC)
         03-5912-0840 (平日11:00〜18:00)

[問い合わせ]
J-Stage Navi 03-5912-0840 (平日11:00〜18:00)
劇場事務所 03-5367-5622(平日11:00〜18:00)

[公演当日問い合わせ]
03-3350-0335(劇場ロビー直通)

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『修羅』終演

・いわゆるショーケース的イベントに参加するのは『視点vol.1』「ファイトアローン」につづいて三回目である。これらの経験から学んだのは、乗せる作品は「直球」にすべきということで、初めて観る方が「へえ、こういう劇団なのか」と思い、日ごろ支持してくださってる方が「そう、これがこの劇団の持ち味なんだよ」と思ってくださるようなものにするのが圧倒的に正しいということだ。だから『修羅』は鵺的の直球である。名刺を作るような気持ちで書いた。

・『フォトジェニック』のあと、川添、奥野、堤、小崎の四人を中核にした公演を「トライアル」ってことにしようかと提案したら皆乗ってくれ、今回は実質その第三弾(vol.2.5ですな)にあたる。彼女たちは実力もさることながら、精神的に自立していて、個人主義者で、良い意味で他人に関心が無い、自分からすると集団創作に必要な美徳を備えた稀有な存在である。今回も大いに貢献してくれ、大いに助けられた。この先もさまざまなかたちでコラボレートしていきたいと思っている。

・上記四人に加えて、今里真、宮原奨伍、杉木隆幸、小西耕一、ハマカワフミエ、赤猫座ちこ、と良い役者が揃った。皆脂が乗っている時機だったのだと思う。稽古から本番まで、毎度あざやかに変化する芝居を観ているのはたのしかった。特にそれぞれの長女を演じたお二人にはダメらしいダメをほとんど出しておらず、それでいきなりあれが出来るのはすごいことだとなかば感心しつつ、なかば呆然と観ていた。「底力」とはああいうことを言うのだろう。

・わずか六回の本番だったが、午前11時開演の日も客席の八割が埋まり、それ以外のどの回もほぼ満席で、連日の盛況だった。作品自体の評判も良く、俳優たちの評価も高かった。作演としてはとりあえず責任は果たせたと胸をなで下ろしている。

・作家にとってはどんな経験も肥やしであり無駄はひとつもない、いついかなるときも自分を救ってくれたのは自分の才能で、だからこれまで以上にそれを大事にしていこうと思ったのが今回の個人的総括である。せいぜい大切にしますよ。自分を。これからも。

・九月本公演は『悪魔を汚せ【再演】』である。十周年記念公演で二週間。詳細後日。どうかご期待ください。

・最後に、主催のオフィス上の空の皆さん、すべてのスタッフ、参加団体、関係者の皆さんに感謝いたします。ありがとうございました。またどこかで!(文中敬称略)

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1つの部屋のいくつかの生活

・今年が旗揚げ十周年で、秋に本公演は決まっているが、上半期に何もやらないのも寂しいね、何かやろうか、だが何をやろう、トライアルの第三弾かな……などという話をしていたところへお声がけいただいたのがこの企画だった。渡りに船とはこのこと。ありがたく参加させていただくことにした。

・キャストの顔ぶれをごらんいただければおわかりの通り、これは実質トライアル第三弾である。「出張トライアル」などと冗談を言っていたりもする。

・今回は川添、奥野、堤、小崎の四人が姉妹である。今里、宮原、杉木、小西がそれぞれの夫である。姉妹の亡くなった父親が愛人に産ませたもう一組の姉妹がいて、これがハマカワと赤猫座である。赤猫座は本妻の子たちを憎悪しており、復讐のために夫たちと関係を持つ。それが発覚し、四姉妹は夫たちと二姉妹に招集をかけ、親族会議を開くという話である。敬称略。

アガリスクの冨坂さんが「修羅街diaryじゃん」と書いていて笑ったが、四姉妹ということで『阿修羅のごとく』を連想し、それでタイトルを『修羅』とした。実はもうひとつ連想した作品があるのだが、それは黙っておく。役名で気づく方もおられよう。ちなみにポッキーでも『姉妹坂』でもない。気づいた方は吉祥寺で僕と握手。

・『悪魔を汚せ』以降、モノローグや語りを多用してきたが、今回はひさびさにそれをやめて、ワンシチュエーションの会話劇を作る。最近の作品からご覧いただいているお客様には新鮮に映るかもしれない。作風は作者ではなく作品が決めるものだという考えで、それは「鵺的」と名乗っている理由のひとつでもある。

・おかげさまでチケットの売り上げは順調なようです。すでにご予約いただいた皆様、ありがとうございます。まだの方は、ぜひお早めに。春の吉祥寺でお待ち申し上げております。

 

オフィス上の空6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』参加作品

鵺的『修羅』
作・演出 高木登
2019年4月6日(土)〜14日(日)

[キャスト]
赤猫座ちこ(牡丹茶房)
今里真
奥野亮子(鵺的)
川添美和(Voyantroupe/(株)ワーサル)
小崎愛美理(フロアトポロジー
小西耕一(Straw&Berry)
杉木隆幸(ECHOES)
堤千穂
ハマカワフミエ
宮原奨伍(大人の麦茶

 

[スタッフ(鵺的のみ)]
演出助手 函波窓(ヒノカサの虜)
仮チラシデザイン 詩森ろば(serial number)
文芸協力 中田顕史郎
舞台写真撮影 石澤知絵子
ビデオ撮影 安藤和明(C&Cファクトリー)
協力 大人の麦茶/ヒノカサの虜/フロアトポロジー/牡丹茶房/Straw&Berry/Voyantroupe/オフィスマトバ/ケイエムシネマ企画/ファザーズ・コーポレーション/フォセット・コンシェルジュ/(株)ワーサル/ECHOES/J-Stage Navi/井神沙恵


[参加団体]
mizhen/シンクロ少女【赤】
鵺的/かわいいコンビニ店員飯田さん【青】
アガリスクエンターテイメント/Straw&Berry【黄】

[タイムテーブル]
同時上演 かわいいコンビニ店員飯田さん『我がために夜は明けぬ』

※鵺的→かわいいコンビニ店員飯田さんの順に上演。

※途中休憩10分を挟みます。
4/7(日)14:00【青】
4/8(月)19:00【青】
4/10(水)14:00【青】
4/11(木)11:00【青】
4/12(金)19:00【青】
4/14(日)15:00【青】

[会場]
吉祥寺シアター
180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-33-22
0422-22-0911

[チケット料金]
全席指定
前売 4200円
当日 4700円

[注意事項]
・チケット扱いは団体名のみ選択可能です。ご希望の方は「鵺的」をお選びのうえご予約ください。
・チケットの出演者扱いをご希望のお客様は、チケットの半券の裏側に希望キャスト名を事前にご記入のうえご来場下さい。
・車椅子でご来場予定のお客様は、チケット購入前にかならず「ticket.luckup@gmail.com」までお問合せ下さい。

[発売]
2019年2月9日(土)11時〜 一般発売
[WEB予約]http://confetti-web.com/6produce
[電話予約]カンフェティチケットセンター 0120-240-540(受付時間 平日10:00〜18:00)
[チケットのお問い合わせ]ticket.luckup@gmail.com

 

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一年

・年頭に今年も一瞬だろうと思っていたが、本当に一瞬だった。このところ毎年実感はおなじである。年齢を経るほど歳月が過ぎ去るのが早い。死が近づくのも早い。
・とはいえ二月の『天はすべて許し給う』は遠い昔に感じられる。先日『死旗』の出演者に会ったら、その人は「(『死旗』は)九ヶ月くらい前のような気がする」と言っていた。芝居を通じて感じる時間は特殊である。日常とは別の時間が流れていて、ときにその感覚は混じり合い、歪む。自分にとっては『死旗』からの三ヶ月が長かった。一瞬だったが長かった。この三ヶ月がこの一年だったと言っても良いほど密度の濃い時間だった。いつになく人に会っていたからだが、そのよろこびをいまさら知った。ずいぶん損をしてきたな、とこの歳にして後悔している。
・来年は目がくらむほどの仕事量が待っている。遊んでいる暇はたぶんない。つらい。だができるうちにできるだけの仕事をしておかないと。貧乏暇なしとはよく言ったものだ。
・芝居は三つ。まずは四月の六団体合同公演である。一時間の中編で、十人のキャストが火花を散らす。近く詳細情報公開の予定。残りの二つはまたおいおい。舞台版『銀英伝』の続編にもご期待ください。
・アニメもいろいろ……こちらはまだ言えるものがない。そのうち情報公開されるだろう。年末年始はもっぱらこれで忙殺されている。
・自分は人に恵まれている。だから口が裂けても「つまらぬ人生」とは言えなくなった。せめて彼らの恵みになるよう努めたい。ありがとう、来年もよろしく。