日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

四十一歳の地図

例の結婚詐欺師に謀殺された男性の話に凹んだ。同い年である。さんざんあちこちで取りあげられているが、彼が書いていたブログの最後のエントリがこれで、記述の内容もさることながら、この菓子の写真にやられた。今年一番痛ましい気分だ。
・要はヲタであり世間知らずであって、趣味を仕事にした人である。自分とたいして変わらない。ちがうとすれば、自分の方が彼より何倍か生い立ちが不幸なだけだ。立場の弱い人間の方が世間の正体がよく見える。恵まれていた分、この女の付け入る隙があったのだろう。
・死の機会は平等だが、死に様は平等ではない。わかってはいるが、見せつけられると動揺する。けっきょく、いつ死んでもかまわないよう身辺を潔くしておくしかないのだろうと思う。いかに生きるかではなく、いかに死ぬかを考えるべきなのだろうと思う。老いよりも先に死を間近にとらえようと思う。とどのつまりは日本人的な心性に近づいていく。「血」ってのはこういうことを言うんじゃなかろうか。
・某新番の打ち入りパーティーで、慣れぬ挨拶などしてきた。ライター陣はトシゾーネモトとO田さんが残念ながら欠席、姐とM井さんにはさまれて歓談した。晴れがましい席は苦手で、とにかく心底疲弊した。帰宅してぬこの相手をしながら、自分が幸福なのかそうでないのか考える。結論は出ず、それをここに書くことにした。とりあえず今日は生きている。