日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

納骨

・日曜日に納骨した。早いもので明日は月命日になる。
・霊園にお花と手紙が届けられていて、それは野良時代に世話をしてくださっていたボランティアの方からだった。亡くなった翌日に逝去のご報告をさしあげたところ、「それはうれしいしらせです」とひどく喜んでいただいたのだった。訃報が「うれしい」という感覚は猫好きでないと理解しがたいものかもしれない。野良猫の行く末はたいがいが消息不明であり、その猫がどこでどのように亡くなったのかわかることは何よりの便りなのだ。
・手紙には自分も知らなかった野良時代のエピソードがつづられていて、あの猫の生涯のたった三分の一しか知らないことをあらためて思い、切ない気持ちにさせられた。子猫のときに出会っていれば二十年間いっしょにいられたわけだが、二十年前の自分にこの猫を幸せにできたかどうかといえば心もとない。前の猫がいて、亡くなり、霊園に向かう道筋にこの猫がいた、そうした出会いだったからこそ晩年をともに幸福に過ごせたのだと思う。すべては運命である。
・あたりまえのように現れたこの猫とおなじく、次なる猫が自分の前に現れることを待ちわびている。前の猫が縁を紡いでくれたように、今度はこの猫が自分を導いてくれることだろう。