日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

再演というものをおこなうと

・おのずと昔のことを考えるようで、やたらと初演のときのことを思い出す。あのときは池畑さんなどはとても苦労したろうが(リサカ役でえんえん食べ続けていたため終演後に10キロ肥った)、キャストは総じて皆楽しんで演じており、自分も嫌な思い出はない。
・ただひとつ嫌だったのがある俳優の友人客の複数のアンケートで、そこには「どこが昆虫系?」「もっと一般の人間にも楽しめるものを」などとことごとく悪評が書き込まれており、「×××の友人」とその俳優の名前だけが書いてあって実名は書かれておらず、ようするに組織的にそういうものを寄越してきたわけである。どういう意図なのかがよくわからないのだが、それまでにもまあいろいろあったので、そういうことの積み重なりが、彼の周囲で「あの劇団に一矢報いてやろう」という空気になったのかもしれぬ。けっきょく公演の後に彼は辞めたのだが、正解だったと思う。まともに役者を目指している人間に、そんな友人が出来るはずがないからだ。それにしても彼の劇団内における立場というものをいっさい思いやっていないところがすごい。「一般人」てのはそういうものなんですかね。だったら「一般の人間にも楽しめるもの」なんて一生書きたくねえよ。
・再演が成功しただけに、ただむなしく彼らのことを思い出した。みなさん幸せだったらけっこうなんじゃないですか。ぼくもこの夏幸せでした。頑張ってください。以上。