日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

好天

・夜中というより早朝の四時半に入稿して爆睡、夕方から打ち合わせ。こんなくだらないホンでいいのだろうかとしばし悩んだが、トシゾーネモトと入江くんの書いたプロットが輪をかけてくだらなくて笑う。ふたりとメシ食って帰宅。
都筑道夫の『サタデイ・ナイト・ムービー』(集英社文庫)。高校時代に愛読したものだが、『エクソシスト2』について書かれた文章を再読したくて取り寄せた。

(略)冒頭から、凝った画面にひきこまれて、途中なんども思わず「うまい」と口走り、映画がおわったときには、われを忘れて、私は拍手していた。(同書p54)

もう絶賛。詳しくは直接本書に当たっていただきたい。
・当時から今日までこの映画を褒める人は少ないので貴重な定見である。一作目とは異なる美学やロジックで貫かれた作品だから、大半の観客が戸惑ったであろうことは想像に難くない。自分もはじめて見たときはぽかんとするだけだった。だが曰く言いがたい魅力があったのは事実で、なぜにこの文章を読み返したかったかと言えば、この魅力を自作で再現したいと野望したからである。どこにも属さず、何にも似ておらず、見る者を居心地悪くさせる異物のような作品。次の次の芝居はそうするつもりでいる。
・それにしても本書に登場する作品達はことごとく自分の趣味。というか自分の趣味が本書の影響下にあるのだということがいまさらながらによくわかった。読んでいるうちにジャンル作品に対する渇望がいやでもかきたてられていく。ロッド・サーリングが脚本を書いた『夜空の大空港』というテレフィーチャーについて、

(略)アメリカ横断の旅客機に、ある高度を越すと作動し、その高度よりさがると爆発するという厄介な爆弾がしかけられる。犯人は大金をゆすりとろうと、なんども電話をかけてくるが、これが心臓の悪い病人で、途中で発作を起して、死んでしまうのだ。
 爆弾の隠し場所もわからない。スイッチの切りかたもわからない。燃料も残りすくなくなってくる。せっぱつまって、ヴァン・ジョンスンの機長がひとつだけ、助かる方法があるのに気づくのだが、そのアイディアがすばらしい。ごく単純でいながら、よく盲点をついている。(同書p59)

ここまで書かれて見ないわけにはいかないと思うが、見るすべがない。向こうでビデオは出てるらしい。取り寄せるか。画質悪くてもいいから国内版DVD出してくんないかな。ちなみに本作は石上三登志『私の映画史』(論創社)の「TVムービー作品事典」でも当然のように取り上げられていて、

このアイデアは、実は60年にポール・スタントンという作家が〈星の村〉なるサスペンス航空小説で使っている。奇想天外なアイデアを誇るサーリングとしては、これはどうなっているのかな。出来はまあまあだが、そんなわけで僕は大いにしらけました。(同書p556)

とのこと。奥が深いですなあ。