日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

静養

・風邪くさいのである。喉が痛くていがらっぽい。速攻医者行って薬もらってきた。効果はまだ。週末はおとなしくしておこうと思う。観たい芝居がいくつもあったのに。
・そんなわけでずっと家。録画してあったNHKの『未解決事件・File.02 オウム真理教』を見た。01の『グリコ森永事件』も良かったが、これもなかなか。ある古参信者(凶悪事件には携わっていない)に取材し、内側から見たオウムの複雑な事情を明解に提示。オウム事件の映像化はむずかしいと聞いていたが、時を経たからなのか、ほとんどの信者たちが実名で登場しており、撮りようによっては猟奇的な表現になりそうな事件もしっかり映像化されている。あるいはNHKだから出来たことなのか。
・むかし『コンクリート』という綾瀬の事件をもとにした映画があって、ネットを中心に上映反対の動きがあり、当初上映予定だった劇場の番組からは外され、最終的にアップリンク・ファクトリーで上映されたという顛末があった。けっきょくあの作品はいまだに見ていないので論評はできないが、当時非常に不快だったのが、上映反対を訴えている大方が「(製作者たちは)事件をもとに金儲けしようとしている」という予断のもとに動いていたことである。あきらかに根拠が希薄で、その背後にはVシネや低予算映画に対する差別意識が感じられた。被害者役がAV女優なのがけしからんという意見もあり、これなど完全にAV差別である。ようするに「いかがわしい連中が作ってるからいかがわしい映画に決まっている」というわけで、単なる無知が原因だから始末が悪い。こういう手合いはピンク映画やロマンポルノやVシネマから世界的な傑作が何本も生まれているという事実を知らない。知っていれば可能性を見たはずで、まずは見てみないと判断できないと考えるはずなのだ。それで駄作だったら駄作と切り捨てれば良いだけの話である。上映自体を封じようとするなど彼らの自意識を満足させる以上の意味がない。
・こんな話をなぜ思い出したかといえば、綾瀬の事件もNHKがドラマ化したら誰も文句を言わないんじゃないかと思ったからだ。いても『コンクリート』のときのようなヒステリックな騒ぎにはならないだろう。なぜなら天下のNHK、決していかがわしくないからな。人はみな権威に弱い。なんだかなあと思う。