日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

真夜中の招待状

・今日も一日家の中。だがDVDを見る余裕くらいはできたので、野村芳太郎の『真夜中の招待状』を見た。なかなか見る気が起こらずに放置していた作品。
・というのは、自分がガキの頃にテレビでオンエアされたのだが、始まる前に寝てしまい、翌朝祖母に聞かされた内容が信じられないものだったからである。
「心霊写真に写ってた幽霊がさ、×××だったんだよ」
 そんな映画が存在するとは到底思えなかったのだが、今回見てわかった。存在する。「×××」の解釈にはちと違いはあるが。
・どう考えても後味悪そうなので敬遠してたわけですが、この歳で見るとまあなんとか。ネット上には「笑っちゃった」とか「怒りを覚える」とかいう酷評が散見されますが、これよりビザールな作品なんていくらでもありますからね。『ファンハウス』とか。長文でまともな感想を書かれてる方の何人かが『エレファントマン』のヒットの影響を指摘されていて、ああなるほどと思いました。
・でも自分はあまり悪趣味だとは思わなかったのです。むしろ野村芳太郎の演出にはつつしみを感じる。「あれ」を決して大写しにしたりはせず、写真や絵などの間接的な表現でしか描写しないからです。感心しました。こういうところは「プロ」だなあと思うのですね。
本格ミステリの弱点は「理屈っぽくなる」ところで、本作もその点は免れていません。でもなんというか、核が異常ですからね。そういうことがどうでもよくなっちゃうんですよね。
・とはいえ『八つ墓村』が成功したのは(俺は成功だと思っている)、原作が「たたりを利用した殺人」だったのを「本物のたたりによる殺人」にしたからだと思うんですけど、本作ももっと徹底的にそうした方がよかったんじゃないかと思いました。謎解きよりも「呪い」と「運命」を描くべきだったんじゃないかと。そうすればもっと心に残る作品になったんじゃないかと。
・以下、予告。「あれ」は出てきませんので安心してごらんください。