日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

『夜会行』終演(1)

・すっかり公演の告知と後書きに特化した当ブログ、とはいえこの後配信公演があるのでネタバレ全開でも書けないし、作品解説的なことは販売用パンフレットで書いたり語ったりしたので、実はそんなに書くことがあるわけでもない。とりあえず何回かに分けようかしら。というわけで(1)にしたのだけれど、(2)はいつになることやら。

・女性版の『真夜中のパーティ』をやろうとしたわけですが、時代もちがい、国もちがえばおなじものになるわけはなく、かつおなじにするつもりもなかったわけなので、このような作品に。ちなみに昨年JAT主催でおこなうはずだった公演の最初の仮題は『ガールズ・イン・ザ・バンド』でした(『真夜中のパーティ』の原題は“The Boys in the Band”)。それだと露骨すぎるのと、白井晃さん演出で新訳の『真夜中のパーティー』が同時期に上演されることになっていたので、いくらなんでもアレだなと思い、『その日、あなたは真夜中の部屋で』という穏当なタイトルに。上演中止、規模縮小で鵺的で上演となったときにうんうん唸って考え、『夜会行』というタイトルに落ち着きました。ちなみに70年製作ウィリアム・フリードキン監督版『真夜中のパーティー』はTSUTAYA復刻ライブラリーで発売中、2020年にライアン・マーフィー製作によってリメイクされた『ボーイズ・イン・ザ・バンド』はNetflixで見られます。オリジナルへのオマージュは「誕生パーティーの一夜の話」ということと「電話」の二点。

・もっぱらコミュニケーションの断絶を描いてきた自分が、わかりあおうとすること、支えあおうとすることを意識して描いてみたのは、この一年で思うところがあったからです。とはいえ今までだって書いてきてるんですよ。問いかけの仕方がラジカルだったり扇情的だったりしただけで。そんな最近の作品と比べて『夜会行』がこのようなタッチになった理由は販売用パンフレットで述べました。

・今回は今まで以上に山田太一さんを意識しました。山田さんの作品に登場する人物たちは、とにかく人と関わろうとするんですよ。そこまで行ったら狂気の域じゃないかと思うときもあるほど。小浜逸郎さんは山田作品を読み解くキーワードとして「おせっかい」をあげていましたが、その通りだと思います。ハマカワさん演じる廣川の、

「わたしたち、あんたたちの前で裸になってんだからさ、最後まで見ててほしい。いろいろ言うんだったら、とことん関わってほしい。」

というセリフは、山田さんの影響下にあるものです。廣川のあの一連の行動を自分はまったく正しいとは思いませんが、彼女の浅はかさを責めるだけにせず、愚行があらたな希望を生むかもしれないという可能性を残そうと思ったのは、作者である自分自身もいつも以上に登場人物たちに関わろうとした結果だと思います。突き放さずに、寄り添うことを意識して書いてみたんですね。

・さて、未見の方には書きすぎたかもしれません。とりあえず後書き第一弾はここまで。『夜会行』、24日から映像配信開始なので、ご興味ある方はぜひ。配信が終わった頃に、また何か書きます。書かなかったらすみません。まずはご来場いただきました皆様、本当にありがとうございました。

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