日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

『夜会行』終演(2)

・9月3日で配信公演が終了しました。ご覧いただいた皆様、ありがとうございました。というわけで二度目のご挨拶。

・作品解説的なことはパンフレットをご覧いただくのがいちばん良いと思います。お買い逃しになった方は、観劇三昧で購入可能です。文庫サイズ台本も購入できますので、ぜひ。

Twitterのプロフィールに「脚本家/特殊劇作家」としばらく表記していたのですが、本作の情報解禁をする前くらいに「特殊」の文言を外しました。この作品を書く人間が「特殊」を名乗ってはいけないと思ったからです。特殊であること、特異であること、異端であること、そうしたことを積極的に引き受けるのを厭わずにやってきましたし、それを捨てる気はさらさらありません。ただ本作は特殊からも特異からも異端からも遠く、いっそう普遍にひらかれたものにしないといけないと思っていました。そうあることが、ある種の状況に対するカウンターにもなると思っていました。

・海外(主に米国)の映画やドラマを見ていると、女性問題、人種問題、LGBTQ+の問題、人権を巡る諸問題が直接的、間接的にとりあげられることが多く、それがアップデートされた価値観で構築されていることに気づかされます。これは一過性の表層的な現象ではありません。なぜならいずれも人間の実存に根ざす問題だからです。個人では手の届かない地の底からの大きな変化が起きているのです。

・日本はその点まだまだ遅れていて、すぐれた作品が生み出される一方で、無思慮な作品も目立ちます。無名の脚本家は無力ですから、こちらがいくら思慮を重ねても、他のスタッフと志が共有できていなければおしまいです。そういう意味で、作品をコントロールできる立場にいられる鵺的という場所は、自分にとってとても貴重なものです。『夜会行』も、この場でなければできなかったし、このタイミングでなければやれなかった作品だったと思っています。

・現在、自分の関心は、鵺的でいままで取りあげて来た「性」や「暴力」、あるいは「出生」といった問題を、より更新された価値観で描くことにあります。あらたな「異端」、あらたな「耽美」を探ることにあります。それがどのような物語になるのか、どのような顔を持った作品になるのか、自分でもまったくわかりません。わからないからこそ、やる気になっています。新作をお目にかけるのは少し先になりますが、どうかご期待ください。

・『夜会行』は小さな作品でしたが、自分にとってはとても大きな節目となった一作でした。多くのご感想、本当にありがとうございました。次はソフト化です。詳細は決まり次第告知いたします。今後ともご注目ください。